フォーゲル聖誕祭 〜深夜の部〜


※こちらの記事は東京カルチャーカルチャー様にて行われている、めせもあ。メンバー聖誕祭の紹介文をリスペクトして書かせて戴いております。



無個性という名の個性のカタマリ系甘党わんこ男子
時代への快進撃が止まらない!俺らのヒーロー"MeseMoa."の筋肉番長・フォーゲルさんのお誕生月をゴミクズアカウントでもお祝いさせていただいちゃいます!!


フォーゲルさんお誕生月おめでとうございます!
いつまで経っても詳細なお誕生日を明かしてくださらないミステリアスなところ、素敵です!
先日のJUNONソロ無花果フォーゲルで芸術作品のような躯体をお目にかかれたこと、大変光栄に思います!
無花果フォーゲルさんの筋肉の陰影の美しさ、滑らかさといったらさながらジャック=ルイ・ダヴィッド作の名画『パトロクロス』で、Kindle版と紙面の両方で堪能させていただきましたが何度見ても曲線美に打ち震えるばかりです!
ツイートやブログ等の文章媒体で割かし多めに絵文字やエクスクラメーションマークを使用されたり「お腹いっぱい」を「ぽんぽこりん」と表現したり、好きな事を話し出すとちょっと周りが見えなくなって止まらなくなっちゃってご自身の生放送やチェキ会・握手会でマシンガントークを炸裂させてしまったりするのがもうひたすらに愛おしくて堪りません!
若干場の流れと違うことを口走って空気感を「おっと……?」みたいな感じにさせちゃってそれに気付いて真っ赤になっちゃうのも可愛くて、というかもうフォーゲルさんが歩いても歌っても踊っても喋っても何しても可愛いもんで時々「あれ?私フォーゲルさん産んでたかな?」と錯覚してしまうことがあります!自分が生み出した生命体以外のことこんなに可愛く見えちゃっていいの??
そんな天性のカワイさを持つフォーゲルさんもMeseMoa.の新曲『大逆転ディーラー』のMV・ライブパフォーマンスになると一変、カッコ良さで全世界統治できちゃうダンサーになっちゃってもう大変

あ〜フォーゲルさんのギャップチラ見せテクニックにかかればどんな生き物もイチコロなんだろうなぁ~!




(ここから先は勝手な妄想です。)




フォーゲルさんは某64層のパイ生地の間にまろやかなチョコレートが挟まれたサクサクのお菓子を作っているメーカーの、私と同じ部署で働く後輩。
……後輩と言っても別段多く会話をする訳では無いし、同じ部署で働いてる人、ってだけ。
「後輩」なんて呼べるほど親密じゃない。


『この度こちらの営業部分析科でお世話になることになりました、新人のフォーゲルです。あの、フェス行くのとか好きです、よろしくお願いします!』


今年の年度始めに新卒入社してきたフォーゲルさんの第一印象は「出たーーーーーーーー!!!!夏フェス行くタイプ!!!!!!」という感じ。
好感度が低いとかそういう訳ではなくて、単純に自分が生粋のインドア派だから、しっかりした体つきでいかにもスポーツ好きです!休日はジム行きま~〜〜〜す!みたいな見た目の彼にフェスが好きだなんて追い討ちをかけるように言われて、なんとなく先入観で「どうせこの人もラブアンドピースとか提唱して先輩にもクソフランクに接してくるんでしょ……?」とか考えていた。
フェス行くやつは大抵ラブアンドピースすんのよ
知らんけど多分そう

そんなこんなでちょっとフォーゲルさんを避けがちだった私は、直接話さなければいけない用件もほとんどなかったのもあって、彼が入社してきてから数カ月が経過した今もなおまともに会話をした記憶が無い。

しかし今日……遂に転機が訪れることになる。



今日の私はなんだか調子が良くって、仕事がサクサクと進んだ。追加の業務が定時間際になって襲ってくるだなんてことも無く、久しぶりに定刻ぴったりに帰路につく準備を始めることが出来る。
最近会社の取引先の幅が広がって業務が著しく増えていたから、今日は久々にあそこで癒されよっと。

そうして意気揚々と向かったのは、オフィスから歩いて約十五分くらいの細い路地の奥にある小さなブックカフェ。コーヒーも軽食も、個人経営のカフェとは思えないクオリティなのが好きなところ。
いつ来ても混んでいなくて、小さな音で流れるジャズミュージックが心地良い。森の香りのアロマと、インクと紙の香りが上手く調和した自分史上最高の安らぎの空間でお気に入りの本を読みつつ飲むカフェラテは絶品だ。

「マスターこんにちは。カフェラテください」
「かしこまりました。お久し振りですね、お仕事が忙しかったんですか?」
「ですね」

今日はどなたの本をお読みになるんですか?だとか、マスターのオススメはどれですか?だとかをぼんやりとお話して、気が付けば手に取った本に夢中。知らないうちに二時間弱が経過していた。
わ、ヤバい、もう外暗い?!
急いで手元の本を元あった場所に戻し、マスターに空のカップを手渡して速攻でお会計。

「ご馳走様でした!また近いうちに来ますね!」

今日は高校時代の友人と晩ご飯を一緒に食べる約束をしていたからカフェでゆったりするのは一時間ぐらいにしておこうと決めていたのに、いざここへ来ると必要以上に長居してしまうのは私の悪い癖。待ち合わせに遅れてしまうかもだし一応連絡しないと、と少し焦りながら深い緑色の仕事用鞄をガサガサと漁ってスマホを探した。

……しまった、会社のデスクに置きっぱだ。
あぁもう微妙にツイてない、ていうか普通に私が悪いんだけどさ。深いため息をひとつ吐いて、会社へ歩を進めた。


オフィスに入って警備のお兄さんに社員証を見せ、忘れ物を取りに来た旨を伝える。私の急いだ様子を感じてか、予想以上にすんなり通してもらえた。エレベーターに乗り込み《営業部各科》と小さなシールが貼られた七階行きのボタンを押す。
チン、という音と共に開いたエレベーターの扉を出て右折し突き当たりを左に曲がるとドアノブに《分析科》というプレートがかかった広い部屋があるというのは、数年勤めていれば体が勝手に覚えてしまう。
歩き慣れた廊下を小走りで移動して突き当たりを左へ。
すると、てっきりもう電気が消えているだろうと思い込んでいたその一室から光が漏れているのが見えた。
ノックを三回してみると声が聞こえる。

「どうぞ……」
「すみません、スマホを忘れて帰ってしまって……ってフォーゲルさん?!どうしてまだ残ってるの?!」

奥の方のデスクに腰掛けPCの前で頭を抱えてガシガシと掻いていた彼が顔を上げ、私の顔を確認した瞬間からみるみる涙目になっていった。
ガタン、と大きな音を立てて席を立つと大きな歩幅でこちらに歩み寄り私の両手を掴む。

「先輩……!!助けてください!!!!!!」



───話を聞くと、どうやらフォーゲルさんは弊社販売商品表の販売個数の打ち込みを間違えてしまっていたようだった。
商品名と販売個数が羅列された書類の数字をただそのまま規定の位置に打ち込めばいいだけのいわば「書き写し」のような業務なのだけれど、どこかで段ズレを起こしてしまったとのこと。

「どこがズレてんのかは辛うじて突き止めたんすけど、普通にどっか入力間違えてるっぽくて上手くいかなくて……三回くらい上から下まで見直したのに見つかんなくて……キツいけどもう一回打ち込み直すか、と思ったら文書のテンプレ間違って消しちゃって……もう、俺、どうしたらいいのかと、思っ、て……」

誰かが来たことに安心して緊張の糸が緩んだのか、甲子園の決勝で惜しくも負けた高校球児みたいな泣き方をするフォーゲルさん。
私は青春の輝かしさなど微塵もない高校生活を送ってきたため野球部の女子マネージャーをやった経験などはもちろん全くなく、こういう時にどう接したらいいやらとオロオロしてしまった。私が喪女でごめんな
……でもとりあえず、助けるしかないよね。

「フォーゲルさん大丈夫、私そのデータのバックアップ取ってるはずだから呼び戻してそっち転送するよ。二人でやれば多分すぐ終わるし、一緒に終わらそう!」
「……先輩……!!」

ありがとうございます、ありがとうございますと甲子園の決勝試合が終わった高校球児のように頭を下げるフォーゲルさん。もう球児にしか見えなくなってきてしまった
それはともかく、彼を助けるとなれば今晩の友人との食事は欠席せざるを得ない。
「ごめん、一件だけ電話いい?すぐ戻ってくるから」と彼に断りを入れて一旦廊下へ出、今晩の食事を共にするはずだった友人宛てに数回コールを鳴らした。



『もしもし、どうしたの?』
「……ごめんフォゲ美、今日ご飯行けそうにない」
『えー!ウソ、楽しみにしてたのに。……仕事?』
「そ、急に入っちゃってさ。ホントごめん、今度最中の詰め合わせ送るから!」
「やったぁそれなら全然オッケー♡……まぁ、仕事なら普通にしょうがないでしょ?怒ったりできないわよ。頑張ってね、お疲れ」



中に戻ると、自身のデスクの横に姿勢よく立つフォーゲルさんが申し訳なさそうに待っていた。なんだか犬っぽくて、しゅんと下がった尻尾が見える。
……座って待ってたら失礼かなとか思ったのかな、ちょっとかわいいじゃん。

「じゃあ始めよっか」
「はい!」

二人一緒に各々のデスク前に腰を下ろし、猛スピードでキーボードを打つ。最近の女子高生がこのサマをみたら「ウケる 鬼マンジ」などとツイートされてしまいそうなくらいだった。バズっちゃうところだった。


業務開始から2時間ほどした頃、業務は終了。

「すげ、もう終わっちゃった……」
「はー、終わった!良かった良かった!」

驚いたような感動したような顔でPCスクリーンを見つめるフォーゲルさんに、帰らないの?と軽く声を掛ける。
すると彼は慌てたように立ち上がりその場で あ、あの、えっと、などと分かりやすくどもって、直後に驚くほど大きな声を出した。

「……先輩!!!今日はあの、本当にありがとうございました!俺のミスでご迷惑お掛けしてしまってすみません!もし、あの、先輩さえ良ければ……これからメシ行きませんか?!」

つい数時間前に友人との食事の予定が無くなって丁度お腹がペコペコだなと思っていたところだった私は、二つ返事でOK。お腹減ってるから早く行こ!と言うと、「よっしゃ、今すぐ準備します」と張り切った様子で荷物を鞄に詰め始めていて、懐っこい大型犬みたいで可愛いなぁだなんて思っていた。


二人でオフィスを出て取り留めのない会話をする。
彼は私の予想と反してラブアンドピース的な胡散臭いことを言わないし、クソフランクに接してきたりもしない。しかも意外と甘いものや小綺麗なカフェが好きらしくって、今日の晩ご飯も彼のオススメのカフェに連れて行ってくれるらしい。カフェ好きだなんて、意外と趣味が合うみたい。
私がパイの実を口に二つ含んで食べるのが好きだと言う話をすると、「甘いな先輩、俺なんて四ついっぺんに食っちゃいますよ」と顔をしわくちゃにして笑った。


「ここです、オススメのカフェ」

オフィスから約十五分歩いて着いたのは、私の行きつけのブックカフェだった。好きなカフェまで一緒だったなんてびっくり、なんだか嬉しくなってしまう。

「フォーゲルさんもこのカフェ好きなの?!私も大好き!ここのさ、ハンバーグサンド美味しいよね~!!」

想像以上に浮かれた声を出してしまって、ふと恥ずかしくなり「あ、ごめん」と俯いた。
するとフォーゲルさんは、小さい声で

「……そういうとこも可愛いっす」

と呟いて、照れ笑いをする。
さっきパイの実を四つ口に含むことを自慢げに話した時と同じような、しわしわでちょっと可愛い笑顔……作画における線の本数がまるでパイの実の側面みたいだ。

「俺、実は入社した時からずっと先輩のこと目で追ってました。真面目で仕事が出来て超カッコイイのに、笑うと可愛くて、あの、その……」

目の前で真っ赤になられながら自分のことを褒められるというのはなんとも恥ずかしくて、ついさっきまでフォーゲルさんって顔パイの実に似てるのでは?HAHAHAとか考えていたとは思えないくらいにもう彼の顔が眩しすぎて直視できない。
フォーゲルさんが言葉に詰まってしまい、数秒、沈黙が流れた。彼が深呼吸する音が聴こえる。





「……先輩、




















俺、この先は恥ずかしいんで筋肉テレパシーで伝えますね!



目瞑って、両方のこめかみに両手の薬指を置いて俺の上腕二頭筋に集中してください……」






……






…………











…………………………
















「いやいやいや分かんない分かんない」









ちょっとやってはみたものの、バカデカい声で否定してしまった。いや何?筋肉テレパシーって何?二十数年間生きてきて初見だわ 筋肉でテレパシーは無理でしょいやそもそもスタンダードなテレパシーも使えないけど……あとそのテレパシーって使う時両腕に力こぶ出さないといけないの??ビックリして目開けた瞬間からそのポージングに二度目の衝撃受けてるからこっちは

「そんなこと言わずに!まずやってみて下さい!」

お願いします!と両手を合わせて頼み込まれてしまい、筋肉テレパシーとかそんな突飛な事を言ってくるくらいなら絶対に直接口で言った方が恥ずかしくないでしょうよと思いつつも、フォーゲルさんの圧に押し切られ彼の言う通りにもう一度挑戦してみた。
両方のこめかみを両手の薬指でぐっと抑えて、意識をフォーゲルさんの上腕二頭筋に集中させる。
すると……恐ろしいことに聞こえたのだ、彼の声が。


『───すか?聞こえますか?先輩』
「……ッ!フォーゲルさん!」
『ふふ、良かったぁー通じて。
……じゃあさっきの続き、言いますね』

「……うん」


脳に直接注がれるような彼の声とテレパシーという謎の制度にドキドキしながら、ぐっと、息を飲む。











『俺、先輩のことが好 ─── 「何だよフォーゲル来てたんなら言ってよ〜〜〜〜〜〜!!!!!」

















突如として開いたカフェの扉から飛び出してきたのは、フォーゲルさんの上腕二頭筋を指すL字型のダウジングロッド(※)を両手に持った……


「!野崎さん……!」
「マスター!……って、え?フォーゲルさん、そんなにマスターと仲良しなの?」
「野崎さんは俺が高校生の時に筋肉テレパシーを伝授してくれた師匠なんです。ねー、野崎さん!」
「ハハハ、フォーゲルは随分飲み込みが早くてね。俺は会得に三年掛かったんだけどフォーゲルは僅か三ヶ月でマスターしたんだ」


嫌だな野崎さん、褒めすぎっすよとマスターを肘でぐりぐりする楽しそうなフォーゲルさんを見ていたら、なんだか全てがどうでも良くなって私もマスターに筋肉テレパシーを伝授して頂こうかな〜〜〜と思ってしまいました!
フォーゲルさんからのドキワク☆マッスルラブコールは残念ながら受け止めきらないうちに強制終了されてしまいましたが、その後店内で食べた食事はしっかり美味しく楽しかったです!





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈






フォーゲルさんお誕生月おめでとうございます!
本日の聖誕祭、めいっぱいお楽しみください!









※L字型のダウジングロッド はこちらのことです。






なつみ(道産)